【観た】風立ちぬ ~社会の中で夢を生きるということ

今更ながら、観てきました。今夏一番の話題作「風立ちぬ」。

感想は、一言、「素晴らしかった」。これに尽きます。
普段めったに「今すぐもう一度観たい!」とはならないのですが、今回は、昔の映画館みたく入れ替え制じゃなければこのままもう一回観られるのに…と思いました。

「魔女の宅急便」が小学校5年生?6年生?の時の公開で、公開前から熱狂的に情報を集め、映画館では3度は観た覚えがあります。
ナウシカとラピュタは残念ながら金曜ロードショーばかり。
以降、ジブリ作品は、宮崎監督作品だけは全て観ていますが、私の中で最も好きな宮崎映画は長く「天空の城ラピュタ」でした。
(ナウシカは漫画版は大好きです。)
が、今日、燦然と輝いてきたラピュタの牙城が崩れました。
宮崎作品の中で1番を争う作品ができた、のみならず、全映画の中でもかなり上位に入ると思います。

以下、その他思ったこと感じたことを詳しく。
若干ネタばれがあるやもしれませんのでご注意を。

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冒頭、夢から始まったのが意外でした。

メーヴェ、フラップター、ほうきのどれとも違う、でもどれも思い出す飛行。
キキの旅立ちを彷彿とさせる画面は、意図されたものなのか否か。
判別する術は持ちませんが、しかしあの地中海に浮かんでいるような、そして古いロスアンゼルスのような、からっと乾いた古き良き景色ではないことが、懐かしさと新鮮さを同時に味わわせてくれました。
また、宮崎監督が今まで描いてきた「日本の森・田園風景」とは全く違う、「生活感」というリアリティに溢れた田園風景。

ここから少年期の終わりまで、緑色ばかり観ていました。
里山や田畑、木々はもちろん、飛行機のボディ、柱の陰翳、雲の影、本当に至るところに緑色が使われていて、緑色を見なかった瞬間はなかったのではないか。
ああ、緑色とは「夢」の色なのだなぁと思いました。
希望を育む心の色。
緑色の豊かな表情が本当に美しかった。

全体を通して、これまでの宮崎作品を想起するシーンや登場人物、カット…「セルフ・オマージュ」とでもいいましょうか…もあり、しかし観た事のない・予想もしなかった宮崎作品でもあり、今まで埋められず気づきもしていなかった心の隙間に、温かい水がゆっくり沁み入るような感覚があって、不思議でした。
物語としては、今回が最も「ドラマ」少なく感じます。そこがいつもと全然違う。
でも、すべてのピースが収まるべき所に収まり、その結果思いもよらなかった豊潤な世界が現れています。

残酷な夢を背負い追って、人は生きる。

その姿に…その姿をまるごと肯定する視線に…後半は涙が止まりませんでした。
悲しいのではなく、切ないのでも痛いのでもなく、ただただ心が震え続けました。

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以下、余談。

私事ですが。
私の祖父は、大阪で育ちました。
恐らく、堀越二郎よりも少し若かっただろうと思うので、関東大震災では被災していないと思うのですが。
成績優秀だった祖父は、「船をやりたかった。でも京大には船がなかった」という理由で、今の東京大学に進み、造船に携わりました。

私の思い出にある祖父は、既に定年退職した後の祖父ですし、戦争のことを語りたがらない人だったので、祖父の船への思いはとうとう聞かずじまいでした。

映画の中で、成長した二郎が汽車で向かった先が東大であったのが分かって以降(「本郷の学校に向かう」というセリフから)、軽井沢での恋に至るまでの間ずっと、二郎の言うことやることの一つ一つに祖父を重ねて観ていました。本庄との交友にも、「祖父も若い頃はこんな風だったのかな」と思いました。
火災が起きたら、何よりも資料を救うことを当然とする姿勢。
何カ国語も操り、音楽も文学も一通り身に着けている教養の高さ。
目上のものへの敬意や礼儀を欠かさず、しかし己の本分には悪びれもせず忠実にまっとうしようとする態度。
軍機作りに携わっているため徴兵されない「身分」。

正直に言って、飛行機としてのゼロ戦や航空技術には全く興味がありませんし、持てません。
むしろ、「きっとあの祖父も、こんな風だったのだろう」と思い至り、祖父もこんな時代をこんな風に過ごし生きたのだろうと比定しながら観ることで、非常に身近な気持ちを感じ続けていました。

私の知る老いてからの祖父を、何十年も若返らせて想像しても、十分に納得感を持てるものであり、また逆に、若かりし頃の祖父に想いを馳せられる時間をこんなに長く与えてくれたことに感謝の念を抱いています。若かりし頃の祖父について「教えて」くれたことについても。
しかし、当時のインテリゲンチャの在り様には本当に頭が下がりますね。

そんなことを思って観ていた私の耳には、庵野秀明の台詞は違和感がありませんでした。
むしろ、人物にリアリティを感じました。
上手いか下手かは知りませんが、「確かに現実に、こういう人、いそうだし、いる」と思えました。
(西島秀俊もまた別の意味で、非常に魅力的な人物を好演し、「こういう人、いるいる」感を出していましたが。)

妻となる菜穂子は確かにナウシカやシータ、或いはクラリスのよう。
でも、一番近いのは、島本須美が声を引き継いだ、トトロの姉妹のお母さんのイメージかも。

他の声優陣(というか、俳優陣)もとても良くて、幸せでした。
情報を全然仕入れていなくて、エンドロールでびっくりしたのですがね…(苦笑)

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宮崎監督が本当に引退されるのかどうかは知りませんが、本作を観ると、納得がいくような気もします。
同時代で宮崎作品を味わえるように生まれたのは僥倖だと、本当に思います。

なんとか、もう一度、映画館で観ておきたい映画です。
(こんなのは、すごーーーーく好きな、「スター・ウォーズ エピソードIII」以来です!)


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