ニュースより

ある「生活保護受給者」から聞いた話

堺市長選挙、案の定竹山現職が当選されましたね。
個人的には「なんだかなぁ」と思いますが、これが選挙というものですし、何とか期待を持ち直し、頑張って戴きたいなと思っています。

 

さて、ところで。
生活保護の「生活扶助」部分の見直しがざくざく進行しているようです。

生活保護といえば、いつも思い出すことがあります。
ずいぶん前の、一人の生活保護受給者との短い邂逅です。

私の中に、その方に抱いた感銘が、長く強く残っています。
例の「芸人さんのお母様が生活保護受給者だった」という話に世論が湧いていた時からずっと、どうしても引っかかって仕方ありません。
確かに「不正受給」の方もおられるでしょう。
ですが、あの騒動以来、「生活保護受給者=ズルして税金泥棒」みたいな偏見が強くなっているように見受けられるのが、残念です。
それで、この思い出を書くことにしました。

 

****

 

その方は、20代も半ば過ぎくらいに見える女性でした。

ある日の午後、とある電車の中で、恥ずかしながら私はそのとき、せっせと化粧をしていました。
次の用事のためにどうしてもフルメイクをする必要があったのだと思いますが、とにかく内心冷や汗をかきながら、さっさと手早くしなければ…と必死でした。
便せんに何枚も何枚も何かを認めていた隣の女性が、何度かちらちら見てくるのを感じ、「本当にごめんなさい…」と恥ずかしさに縮こまっていました。
すると、その女性が私に話しかけてきたのでした。

「あの、すみません」
と言われ、「きたっ!」とドキドキしつつ「はい…」と答えた私に、彼女は言いました。
「さっきから、じろじろ見ていてごめんなさい。私、化粧品がすごく好きで、他の方がお化粧されてるのを見ると、ついつい見てしまうんです。
そのアイシャドウ、すごく可愛いですね」
予想と180度違う展開にものすごく驚きながら、「これですか?ご覧になられます?」と取り出すと、
「見せて戴いていいんですか?!わぁ、ありがとうございます!」
と喜んで受け取られ、しばらく(いわゆる女子の)化粧品談義をしました。
「元気」という風ではないけれど、とても素直で明るい感じのする方だな、と思いました。
(話の最中、「こんなところでメイクしてて恥ずかしいです、ご迷惑かなぁとドキドキしてました、ごめんなさい」と謝ると、「えええ!!全然!!むしろ見せて戴いて嬉しいんです~!」とあっけらかんとおっしゃっていました。ほっとしました…)

そして彼女は、自分の話をし始めました。
もう詳細は忘れましたが、それはそれはもう、「不幸」ってこういうことかと思うようなお話でした。
本当に詳細は忘れてしまったのですが、たとえば「母は男をつくって逃亡、父は殴る蹴る、兄は性的暴行、で自宅軟禁」とかそういう感じの。
(それこそネットではよくある話ですけどね…生の目の前の人の口から語られると、簡単に同情できないほど凄惨ですね)
そして彼女は思春期以降深く心を病んでいるそうです。(病名も忘れました。)

家を出たくて仕方なかったが、当然親兄弟は閉じ込めて絶対出してくれないので、お金を稼がねばならない。
ところが、精神疾患のため、まず面接に行けない。長く外出も出来ない。
が、家にずっといられる訳もない。

それで、精神科の主治医のはからいで、生活保護を受けて独り暮らしをすることとなった。

彼女は言いました。
「最初は、なぜだか、家を出られる訳がないし、出てはいけないと思っていたんです。出たいんだけど、出ちゃいけないって」
「だから、先生に『出た方が良い』って言われたときも、結構長く渋ってたんです」
「でも、ずっと治療を受けて、ずーっと『出た方が良い』って言われ続けて、だんだん『そうなのかな』と思い始めて、大決心しました」
「家を出ないと治らない、って言われたんです。でも、父も絶対ダメって言ってたし。私が決心してからは、もう生まれて初めて大反抗して、すっごいケンカして、むりやり押し切って、先生にも手伝ってもらって、やっと出たんです」
彼女はそう、静かに伏し目がちに、でも少し晴れやかに誇らしげに、微笑みながら言いました。

「私を救ってくれた精神科医の先生は、高齢で退職されてしまったので、別の所をその先生から紹介してもらいました」
「でも、私はその前の先生が本当に好きで、大好きだから、お願いして、『おとうちゃん』って呼ばせてもらって、暇があったらこうして手紙をたくさん書いているんです」
「たまに、おとうちゃんが会ってくれて、私が化粧品好きだから、デパートとかの高いのじゃないけど、ちっちゃい安いのとか、たまに買ってもらったりして」
「おとうちゃんに会うのが本当に嬉しくて楽しくて」
“おとうちゃん”の話をしているときの彼女は、本当に本当に嬉しそうで、心から慕っているんだなということがとてもよく伝わってきました。
彼女にとってはその元医師の老先生が、彼女が本当に心を許して甘えられる、正に「娘」にとっての「お父さん」なんだろうなぁと。

「いまは、週何回(筆者が忘れました)、通院するので精一杯で、働くなんてまだ全然できません。でもリハビリだと思って、その週何回かだけは頑張って必ず出て、長く外にいるようにしてるんです」
「でも、こうして、外に出られて、1人で暮らせて、家にいても嫌なことも誰にもされなくて。おとうちゃんもいてくれて、好きな化粧品も、ほんとにたまにちょっとだけでも、買えて」
「ほんとうに、前のことを思ったら、こんなに幸せでいいのかと思うんです。ほんとうに幸せで、ありがたくてありがたくて」
「私みたいな何もできない人間のために皆さまの税金を使って戴いて、こんな思いをさせてもらえてるなんて、本当にありがたいんです」
「私は全然まだまだ汚い人間で、ものすごく人を恨んだり憎んだりしてきたし、今でもそういう気持ちがあるんです。私は誰よりも地獄を見ました。それは自信があります。」
「だから、自分が世界中で一番不幸だっていう気持ちがあるんです。心のどこかで、まだそう思ってしまってるんです」
「でも、今はまだそうでも、こうして皆さまのお陰で生かして戴いていて、だからそういう気持ちも少しずつ消していかなきゃ、って思うんです」
「おとうちゃんも『もう長くもないだろうけど、生きてる限りはいてあげる』って(笑)言ってくれてるし、こうやって皆さまに生かしてもらって支えてもらってるんだから、いつか返せるようになるのか、それもまだ分からないけど、それでも少しずつでも頑張っていこう、って思うんです」
「ほんとうに、ありがたいんです」

彼女は、確かな口調で、深い声で、輝いた表情でそう言ったのでした。

 

****

 

その時も思いましたが、今こうして書いてみて改めて、「なんでまた、一期一会の通りすがりにここまで話をされたのかなぁ」と思います。
彼女の生活を慮るに、きっと話し相手がまずいないのでしょうね。
もちろん、精神疾患で、心のバランスを欠いている=対人関係の距離感が多少違う、というのもあるのかもしれないですが。

この時こうしてお話しただけの、まったく文字通り「一期一会」でした。特に連絡先を交換した訳でもありませんでしたし。
(ネットで言うところの「釣り」だとか、単なるオーバーな作り話だとか、そういうことではなかったと思います。「天性の大嘘つき」とか「虚言癖の愉快犯」ではなかったのかと問われると、絶対違うとは言い切れない訳ですが。)

しかし、「袖触れ合うも他生の縁」と申します。
本当に、この女性のお話は、私の中に深く刻まれました。

もし万が一、彼女の身の上話が作り話だとしても。
きっと、この話が「真実」である人は、この日本の中にはいるのだと、私は思います。

「家族による扶養義務」が強化され、「水際作戦」が行われ易くなったとき、彼女のような人は一体どうすればいいのでしょう?
DV被害者である妻たちは?

そしてまた、「生活保護」は「セイフティネット」です。
セイフティネットがセイフティネットたりえるためには、「無差別平等」である必要があります。
「確かに百歩譲って、筆者の書いたような人には生活保護受給する権利があるだろう。が、違う事情の人は受けるべきではない」
…つまり「生かして良い人悪い人」を自分の価値観で選別する権利は、少なくとも私にはありません。そんなもの、持ちたくもありません。
あなたは自信を持って、その権利を持ち行使できますか?
(裁判官や死刑執行の命を下す大臣ですら、個人的にその権利を持っているのではありません)

 

最後に、私が彼女の身の上話を真実のものだと感じている理由と、最も感銘を受けた点を述べて終わりにしたいと思います。
彼女の、「人を憎み恨む気持ち」の告白についてです。
これは別に、私からその点について質問した訳ではありません(終始聞いてるだけでしたし)。
彼女が自ら話しました。

精神疾患を患った人が、その原因を自分ではない誰かの言動に求め、その結果その人を心底憎み、恨む。
そして、「患っていない人」=「元気な人、輝いて見える人、幸せそうに見える人」を羨み、妬み、どうして自分はそう在れないのかとほぞを噛み、自分を責め、そして何かの拍子にその人たちに憎悪を向ける。
決して珍しくない心性です。
深い怒りを押し殺し続けた人ほど、回復の過程で通る心性なのではないかと思います。
(「地獄を見た」と言った時だけ、彼女が「怒りのマグマ」…それこそ「地獄の釜の中」にあるような…に包まれた気がしました。まだまだ全然、生傷は癒えていないのだな、と思いながら、彼女の意識のフォーカスをそれまでの話に戻した記憶があります)
が、この思いについての自省を自発的に言える人というのは、本当に患い、本当に苦しみ、本当に「なんとかそこから出よう」と努める人だけだろうと思うのです。

彼女の苦しみは本物なんだろうと思う所以です。
彼女はそれを、恐らくは、「自分は嘘臭くとられるであろうほど今の状況に感謝しているが、嘘でもないし、逆に単に心清らかなのでもないのだ」と伝えたくて…そして「だからこそこの状況への感謝は本物なのだ、少なくとも自分にとっては本当にありがたいことなのだと信じて欲しい」という思いから…言ったのではないかと、その時受け取りました。
しかしそれでも、ふと「怒り」「苦しみ」の部分に触れるとそこに囚われそうになるんだろうなと、だからきっと、感謝の気持ちに自分でフォーカスするよう言い聞かせ心がけてもいるんだろうなと、そう思いました。
今思い返しても、その印象は変わらず鮮やかです。

私は、そのとき、感謝の思いを強く伝えようとした、そして葛藤を組み伏せようと壮絶に闘う、彼女というその人、その生きざま、人柄に、深い感銘を受けたのでした。

正直、「ものすごい人に出会った」「私なんて本当にちっさくて全然ダメだ」と揺さぶられました。
彼女のことは、いつも心の中のどこかで生き続けていて、たまにふと思い出すと「私もしゃんとしないと」と背筋を正されます。

 

生活保護受給者は、「だまくらかして濡れ手に粟」と黒い笑いを浮かべている人だけではありません。
こうして、「皆さまのお陰で生かして戴けている」と、心から感謝しながら、出来ることを少しずつ広げていこうと頑張っている人も、他にも沢山いるのだと、私は信じています。

生活保護がそのまま、「生命活動を続けること」に繋がっている人が現実にいるのだ、ということを、どうか、(とうにご存じであろう専門家だけではなく)一般の方々にも、頭と心の片隅に留めておいて戴けたら良いなぁ、と私はそう願っているのです。

 

もう何年も何年も前の話でした。
今頃彼女は、どこでどう暮らしているのかなぁ。
きっと、一筋縄や一本道ではいかない、起伏激しいwinding roadを、一生懸命歩んでらっしゃるんだろうなぁ。
途中で死を選ばずに、今も生きていて欲しいなぁ。
少しでも元気になっていたらもっと良いなぁ。
どうか、彼女と、日本中にいるのであろう彼女のような方々が、少しでも多くの幸せを感じながら生を過ごしていかれますように。


科学者もフクロウもすごい。

ネットで面白い拾いものをして、twitterで流したんですが、1から10まで面白かったのでこちらにも。

「フクロウの頸動脈はなぜ切れない?」AFPBBNews

突然何の話ですか?と思い開けてみたところ、「なぜフクロウは、首をほぼ1回転させても頸動脈を傷めずに済むのか」という謎が解明されたという話だそうです。
なるほど、確かに言われてみれば、フクロウって、こう、首がくるっと回るというイメージがあるようなないような。
(私の中ではフクロウの首は完全に…時計の針のように…くるっと回転するイメージでしたが、記事によれば左右にほぼ270度回るそうです。…くるっと回りはしないのね。。。)

んで、記事は言います。

研究を主導したPhilippe Gailloud医師(血管内治療・神経放射線学)は、こう述べている。「頭頸部の動脈を損傷したことによる患者の症状を診てきたわれわれ脳撮像の専門家は、フクロウが頭を素早く回転させても平気でいられるのはなぜなのか、どうして森の地面には脳卒中を起こして死んだフクロウの死骸がたくさん転がっていないのか、これまでずっと頭を悩ませてきた」

まじですか!
脳卒中のフクロウがいない理由なんて、想いを馳せたこともなかった。
っていうか、フクロウの死因について、考えてみたこともなかった。
それについて「これまでずっと頭を悩ませてきた」人々がいるなんて、まったく想像を超えた話で、本当に驚きました。

その秘密は、血管にあったんだそうです。(私の持てる言葉では説明できないので、記事をご覧ください。)
たしかに、「人間の血管はむしろ収縮しがち」ですが、しかし、フクロウの顎骨下の血管が「血液を貯める袋になる」とは!
なんともはや。なんですかその血管は。
そんなこと言われたら、「血管」というものの詳細について知りたくなるではないですか!
つか、フクロウすげー!

 

いやー、すごい。
フクロウもすごいし、それを「不思議」に思った人もすごいし、解明した人もすごい。

隅から隅まで、私なぞの小さな世界では思いもよらない事柄で埋まっていて、本当に、心底「すごい。面白い。」と感じ入った記事でした。

すごいなぁ。
こういう風に、専門性を極める方々は、独自の視点で世界を見、究明していかれるのですね…。
こうやって、科学は発展し、人々が互いに成果をシェアし合って社会は豊かになってゆくのですね…。
そして、こんな風に、フクロウやその他の(人間でない)生き物が、人間の文明発展に参照されていくのですね…。

いやあ、すごい。
世界は広くまた深遠である。
うむー!


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